毎月10日はラ・テール洋菓子店のサンクス・ケーキの日
ラ・テール洋菓子店の開店記念日は1998年5月。その初心を忘れないために、毎月10日をお客様感謝の日(サンクス・デー)として、その日にしか出ない「サンクスケーキ」を毎月一品開発し、ご予約のお客さまにだけにお渡ししています。この日だけのケーキですが、素材の産地を厳選し、通常のお菓子と同じように開発、準備をしてでき上がったものをご用意。数量も限定させていただいています。 サンクス・ケーキには毎年、年間を通じてのテーマがあります。たとえば、「ロールケーキ」の年もありましたし、「チョコレート」「シュー生地」がテーマの年もありました。
2022年のサンクス・ケーキのテーマは素材との「新たな出会い」。
親交のある生産者さまが新たに取り組む素材や、新たに出会う生産者さまの素材を使い、また、サンクス・ケーキの開発に新たな職人が加わり、サンクス・ケーキをおつくりします。毎月心を込めてお客様への感謝の気持ちと共にお届けいたします。
長野県産・青りんご「グラニースミス」と和歌山県有田産・柑橘「ベルガモット」
長野県・飯網高原より、樹上で完熟してから収穫した、青りんご「グラニースミス」を送っていただきます。グラニースミスは、酸味が強くサクサクとした食感が特徴の青りんご。オーストラリアで生まれた品種で、発見したスミス夫人から名前がつけられました。
また、紅茶のアールグレイのフレーバーでも知られるベルガモットは、レモンのような形や香り、色味の柑橘で主産地はイタリア。国産のものはまだ少なく珍しいと言われています。生食用ではなく、精油を採取する目的で栽培されることが多く、精油はアールグレイの香りづけや香水、アロマオイルなどで使われます。
今回は、和歌山からフレッシュな果実を送っていただくことができるので、果皮と果汁を使いケーキに仕立てます。このベルガモットを使って試作したところ、厨房内がとてもいい香りに包まれました。
ピュイダムールとは・・・
今回のサンクス・ケーキは、ピュイダムール(puits d'amour)。ピュイ(puits)は井戸、アムール(amour)は愛を意味します。直訳すると「愛の井戸」ですが、「愛の泉」と訳されます。
18世紀後半にフランスでつくられたと言われるピュイダムールは、パイ生地やフィユタージュ(生地にバターが層になるように折り込んでつくるパイ生地)でつくった器に、クリームやイタリアンメレンゲをたっぷりと入れ、表面をキャラメリゼしたケーキです。
オリジナルのピュイダムールをお届けします
今回のサンクス・ケーキの開発担当は、ベテランパティシエの栗原です。ケーキの中でも大好きなピュイダムール。
味わいのアクセントにグレープフルーツが使われることがありますが、今回はさわやかな香りが特徴のグラニースミスに、贅沢な香りのベルガモットを使うことにしました。
りんごは、お砂糖で煮てコンポートにしたり、ジャムにしたりすることがよくありますが、今回は、グラニースミスにバニラシュガーやバターを絡めて、ローストしました。こうすることで、果汁が閉じ込められ、食べたときにフレッシュな香りと食感をお楽しみいただけます。ローストしたグラニースミスをフィユタージュの上に敷き詰め、ほんのりコクと酸味のあるサワークリームを合せた生地を流し込み、焼き上げてフラン(牛乳や卵を使った生地をタルト生地に流し入れ焼いたお菓子)をつくります。
そしてベルガモットの果皮の香りを移し、レモンに似たさわやかな香りと酸味の果汁を合せたクリームとイタリアンメレンゲ(シロップと合せたメレンゲ)でふわっと軽い食感のシブーストクリームをつくりました。一つひとつ丁寧に形を整えグラニースミスのフランの上に重ねて、表面をキャラメリゼして完成です。
グラニースミスのさわやかな香りが生きる柔らかな食感のフランに、ベルガモットの芳醇でほんのり甘い香りのシブーストクリームが相まって、絶妙な味わいに。お口に入れた瞬間にふわっと春らしい香りをお楽しみいただけます。(開発担当:開発担当:栗原 清)
日本では珍しい青りんごのグラニースミスと柑橘のベルガモット。フレッシュでさわやかな香りの2種類の果実を生かしたピュイダムールをおつくりしました。