毎月10日はラ・テール洋菓子店のサンクス・ケーキの日
ラ・テール洋菓子店の開店記念日は1998年5月。その初心を忘れないために、毎月10日をお客様感謝の日(サンクス・デー)として、その日にしか出ない「サンクスケーキ」を毎月一品開発し、ご予約のお客さまにだけにお渡ししています。この日だけのケーキですが、素材の産地を厳選し、通常のお菓子と同じように開発、準備をしてでき上がったものをご用意。数量も限定させていただいています。 サンクス・ケーキには毎年、年間を通じてのテーマがあります。たとえば、「ロールケーキ」の年もありましたし、「チョコレート」「シュー生地」がテーマの年もありました。
2021年のサンクス・デーのケーキのテーマは、ラ・テールの職人たちが、「今までに出会ったおいしいお菓子」。 担当者の人生観を変えるようなお菓子との出会いとストーリーを、今の自分が表現し、一期一会のケーキに仕立てます。
オーストリアのお菓子との出会い、深めるキッカケ
今回の開発担当は、ベテランパティシエの永島。
フランス菓子のパティスリーからウィーン菓子をメインとする洋菓子店に修行の場を移した頃、そのお店で当時の師匠に取材の依頼がありました。助手につくように言われたその取材で、ザッハ・トルテやカーディナルシュニッテンなど人気のヨーロッパのお菓子を実際につくり、それぞれの解説をする師匠。その中に「チロラートルテ」がありました。初めて出会ったそのケーキの見た目は真っ白で、切り分けてみても白と茶色...。思わず「シンプルですね。」と言うと、「だからこそ素材のおいしさがわかるケーキだよ。」と師匠は仰いました。
食べてみると、クリーミーな味わい。でもしつこくなく、ほんのり香るコアントロー(オレンジの香りのリキュール)の香りとココア生地、チョコレートのおいしさがふんわりと・・・。ウィーン菓子の奥深さを知るキッカケになりました。
チロラートルテとは・・・
オーストリアの西部、イタリア・ドイツ・スイスの国境沿いに位置するチロル地方。美しいアルプスの山々と、豊かな自然に囲まれています。一年のうち、数ヵ月は雪に埋もれた雪の街です。
かつてこの街の貴族が自邸の屋根を黄金でふき、その黄金色と降り積もる雪の純白さのきらめく美しさはたとえようもなかったとか・・・。チロラートルテは、まるでそのメルヘンのような、チロル地方のひとつのシーンを思い描いてつくられたケーキだそうです。
生クリームにコアントローを合せたムース、小麦粉を使わないココアの生地、チョコレートのムースとシンプルな構成の中に奥深い味わいの広がるケーキです。今回のサンクス・ケーキでは基本のレシピに旬のおいしさを合せておつくりしました。
新潟県加茂市の農家さんより送っていただく旬の桃
今回のサンクス・ケーキでは、毎年お世話になっている新潟県の農家さんより送っていただく桃をたっぷり使っています。新潟県は桃の産地としてあまり知られていませんが、加茂市は土壌などの環境が桃の栽培に適していて、おいしい桃が実ります。
チロラートルテのおいしさのひとつである、とろけるような食感に合うよう、果肉が柔らかくジューシーな桃をコンポートやジャムに仕立てて、ケーキの中に忍ばせています。生クリームのムースには、ヨーグルトを合せて、さわやかな後味に。そしてコアントローではなく、桃のリキュールを香りづけに使いました。旬のおいしさをプラスした、チロラートルテです。
(開発担当:永島 定男)
若い頃に出会ったオーストリアのお菓子。その中でも特にシンプルな「チロラートルテ」を知り、オーストリアのケーキに魅了されました。
ラ・テールでも初めておつくりするケーキです。